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コーネル大学・ホテルスクール留学記

コーネル大学ホテル経営大学院で学んだ記録です。

ホテル産業(北米中心)の概観

今回は、ホテル産業について概略を紹介したいと思います。ただ、私自身が北米のホテル産業での実務経験があるわけではないため、コーネルホテルスクールでの授業において、ホテル産業の概略として説明された部分の紹介ということで、誤りや理解が浅い点があり得ることを予めご了解ください。(内容は浅めです。。)

1.ホテル業界のプレイヤー
例えば米国に旅行されたことのある方は、空港の近くにマリオットやヒルトンなどが複数のサブ・ブランドのホテルを展開しているのを目にされたことがあると思います。しかし、北米について言えば、マリオットのようなブランドのホテルを実際に所有しているのは、多くの場合マリオット自身ではありません。マリオットは単にブランドだけを提供して、ホテルの所有権は別のオーナーがいることが殆どです。また、ホテルを実際に運営している会社も、別に存在しています。そのため、既に出来上がっているホテルでは、ざっくりと「ブランド」「オーナー」「運営会社」が主要プレーヤーと言うことができます。(本当にざっくりとした説明です。)

2.ホテルブランド
(1)ブランド率
現在、世界には500以上のブランドがあると言われています。特に北米では全ホテルに占める(メジャー)ブランド率が約7割にもなっています。
他方、北米以外に目を向けると、ブランド率はアジアでは5割、ヨーロッパでは4割にとどまっています。しかし、地域に依らず、新規に建設されるホテルは高い確率で何らかのホテルブランドを背負っています。

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地域別のブランド率(STR Global, Dec 31, 2014)

(2)ブランドの利点
ホテルの開発サイドから見たブランドと契約するメリットとしては、(1)ブランドの予約システムを通じて集客が見込めるため、投資を得やすくなること、(2)ホテル建設・運営に当たって、ブランドのノウハウを活用することができる、ということがあります。

(3)ブランドの歴史
北米でブランドの先駆けと考えられているのは、スタットラー・ホテルです。ホテルの部屋のや水回りの配置を売り上げを極大化するために効率化し、その建築・運営ノウハウを横展開しました。この建築・運営ノウハウの横展開というビジネスモデルがホテルブランドビジネスの原型です。これ以降、建築・運営のノウハウという意味では、細かいイノベーションはあるものの、基本的にはスタットラーのモデルが他のホテルにも継承されていきます。
最終的にはスタットラーホテルはヒルトンに買収されたのですが、スタットラーがコーネル・ホテルスクールの設立に資金面で大きな貢献をし、スタットラーの死後は、スタットラー財団がホテル・スクールの(educational)ホテルという位置付けで、ホテルスクールに隣接させてスタットラーホテルを建設しました。

(3)北米の主要なブランドグループ
以下が北米の主要なブランドグループです。ブランドグループ内で、それぞれ予約システムやポイント制度を構築して顧客を囲い込んでいるため、航空や海運業ののアライアンスに近いイメージです。高級ホテルが中心のハイアット・ヒルトンから、超高級ホテルのラッフルズからエコノミーホテルのイビス抱えるアコーホテル、低価格のモーテルが中心のチョイスホテルまであり、ブランドグループの戦略は各ブランドグループでかなり異なっています。詳しい説明は適宜wikipediaをご覧下さい。

・アコーホテル
ヨーロッパ発祥のホテルチェーン。関西に縁のある方は、なんばのスイスホテルは馴染みがあると思います。他には、ラッフルズ、メルキュール、ノボテル、イビスなど。

・ヒルトン
抜群の知名度を誇るヒルトン。ハンプトンインやホームウッド・スィートなども。

・ハイアット
パーク・ハイアット、グランド・ハイアット、ハイアット・リージェンシーなど。

・IHG(InterContinental Hotels Group)
日本では全日空ホテル関係で有名です。クラウン・プラザやホリデイ・インなども。

・マリオット
各種マリオットブランド、そしてリッツ・カールトンをブランドに持っています。

スターウッド
シェラトン、ウエスティン、St.Regis、Wをブランドとして持っていますが、2016年にマリオットに買収されました。

・カールソン・レジドール
日本ではあまり見かけませんが、ラディソンやCountry Inn and Suitesを展開。

・チョイスホテル
こちらも日本ではあまり馴染みがありませんが、北米の幹線道路沿いにかなり多く展開しているエコノミーブランド・グループです。個人的にも、米国内のロード・トリップでよくお世話になっています。主なブランドはスリープイン、コンフォートイン、クオリティーインなど。

ウィンダム
北米を中心にラマダやデイズ・インのブランドのブランドを展開。

4.ホテルのパフォーマンス指標
広く使われている指標は、空室率、平均客室単価(Average Daily Rate, ADR)、RevPAR(Revenue Per Available Room)です。
空室率、平均客室単価はそのままの意味ですが、RevPARはホテル業界以外の方には馴染みがないと思います。RevPARは平均客室単価に空室率を掛け合わせたもので、ホテルの収益性を理解する上で便利な指標です。

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米国・カナダにおける空室率、平均客室単価、RevPAR

(1)RevPARについて
具体的にRevPARが指標として便利な場面を見ていきたいと思います。

ホテルの運営サイドから見た時に、例えば日本であれば、ホテルの客室を旅行代理店が予め抑える、というような契約が行われることが多いです。その際に、一室あたりいくらで契約をすればいいかという計算にRevPARを使うことができます。単純に計算すると、ホテルの部屋の売り上げに期待空室率を掛け合わせた額を上回る額であれば、借り上げ契約でホテル側は得をするということになります。この「ホテルの部屋の売り上げ」×「期待空室率」がRevPARです。つまり、旅行代理店の借り上げの契約は、旅行代理店からRevPAR以上の金額を得られればホテル側は得をすることになります(注)。

また、ホテル業界をマクロ的に見る際にも、例えば新聞などでは空室率が用いてホテルの需給関係が語られることが多いですが、本来はRevPARも検討に用いるべきです。なぜなら、空室率が低いのは客室単価が低いため、需要が増えていることが原因である可能性も大いにあるからです。仮にその場合には客室単価が低くなっている理由も考えるべきで、ホテルの客室数だけを見ると実態を見誤ることにもなりかねません。

(2)世界の都市の空室率、平均客室単価、RevPARについて
また、最近では日本では東京や大阪・京都のホテル不足の議論がされることも多いです。それらの地域で宿泊需要が高いことは事実ですが、他方で、世界の大都市と比べると、東京については、空室率はNYC、ロンドンと比べて著しく高いという訳ではないこと、また平均客室単価については、東京・大阪は世界の大都市と比べるととても低いことがわかります。

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世界の大都市の空室率、平均客室単価、RevPAR(Savills World Research Japan, Aug 2016 )
(注)日本で見られる旅行代理店の借り上げ契約について
なお、厳密には旅行代理店との借り上げ契約はRevPARを下回ることが多いです。しかし、そのような契約は必ずしもホテル側の損とは言えません。なぜなら、仮に旅行代理店との契約をしなかった場合は、現実的には、多くの顧客はエクスペディアなどのオンライン予約を利用することになり、ホテル側はエクスペディアにマージンを支払う必要があるからです。エクスペディアのマージンは、20%-30%と言われています。なので、RevPARから、仮に顧客がエクスペディアを利用した場合のエクスペディアのマージンを引いた額が、借り上げ契約の適性額と言うことができます。つまり「その部屋が生み出す売上」×「空室率」×「仮に顧客がエクスペディアを利用した場合にホテル側が支払う必要のあるマージン(20%-30%)」が借り上げ契約の適性額になります。